2/27開催のローカル・イノベーターズ・フォーラム2016では、14のテーマに分かれローカル・イノベーション戦略会議を行いました。
ここでは、戦略会議の内容を簡単にまとめた瓦版を順次掲載していきます。
地域のチャレンジャーを増やす拠点づくり コミュニティを創り育てるデトロイトのものづくり拠点
ローカル・イノベーターズ・フォーラム瓦版第1号
>(クリックでPDFを表示)瓦版第1号「地域のチャレンジャーを増やす拠点づくり コミュニティを創り育てるデトロイトのものづくり拠点」
登壇者
フィリップ・クーリー氏(ポニーライド共同創設者、米国デトロイト)
和田智行氏(株式会社小高ワーカーズベース代表取締役、福島県南相馬市)
ファシリテーター
中川雅美氏(浪江町役場総務課秘書係、福島県浪江町)
プレゼンテーション概要
デトロイトは自動車産業で発展したピーク時の人口は180 万だったが、今は70 万。ある調査では、2015 年にデトロイトに住んでいた人の6 割は経済的余裕があるならデトロイトから引っ越したい、まちから出たいと思っているという。工業都市として発展したが、アートやデザインなどがあってもいいと考え、社会意識の高いものづくり系の起業家が制作や打合せ、実験を行うワークスペースとして「ポニーライド」を設立。広げると寝袋になり、たためばメッセンジャーバックになるホームレス向けのコートを考案した高校生起業家などが、シングルマザーや元受刑者を雇用。場所の提供のみならず、メンターや協働の機能も設け、地元に還元できる事業・プロジェクトを支援。
和田:
原発から15㎞の南相馬市小高区に生まれ育ち、避難所を転々とし、2014年に「小高ワーカーズベース」を立ち上げる。現在全住民が避難しており、28年夏に避難指示解除予定だが、帰還率は予想でも多くて2-3割。65歳以上が55%。ミッションは、避難解除後に人が戻ってくる際、まちに足りていないものや課題を仕事にしてしまうこと。差し当たり、これから帰還する住民を支えるためのスモールビジネスの創出。コワーキングスペース、食堂「おだかのひるごはん」、仮設スーパー「東町エンガワ商店」、「HARIO ランプワークファクトリー小高」などを展開。ゼロからまちをつくっていくことに魅力を感じる、そんな人たちが集まって町が生まれていったらいいと考えている。
ディスカッションより
・東北を訪問し複雑な思いだ。デトロイトで見たような風景もあったが、現地の人に会い、いろんな可能性も見出した。困難があっても前に進んでいこうという思いに出会え、いろんなセクターで和田さんのように活躍する人が増えたらいいと思った。(クーリー)
・決定的な違いは、福島の避難区域には住民がおらず、かつてあったコミュニティーがなくなったということ。さらに人口構成についても、デトロイトには若い人がいるが、福島は避難指示解除されていないため、住民がそこにいないということ。(中川)
・デトロイトを見た率直な感想は、荒廃していて、小高も何もしなければこんな風になる、何か手を打たなければ、ということ。(和田)
・日本と違うのは、クーリーさんのように自分の資材を投げ打って実行するプレイヤーがいるということ。日本では補助金や支援がないと始められない人が多い。我々はやりたいことを実現するために身を削り、リターンを取り戻すんだという気持ちが必要(和田)
・自分の事業はこれからやってみようという人の参考になる。他の事業者の挑戦を止めてしまわぬよう、絶対に失敗できない。(和田)
・何か始めようという思いを持つ人が増えたら、より良いまちになる。デトロイトから離れたいと思っている人もいるが、逆にまちを良くしたいという人がまちを作り上げてくれる。人口流出の流れは変わらないが、デトロイトの町にいろいろな可能性を見出した人が新たに流入してきているのも事実。この町で何ができるかという可能性を絶え間なく示していくことが必要。自分たちは何もないところから始め、人々が住める場所を作り出していった。そうして人々が育ち、コワーキングスペースが生まれていった。(クーリー)
・担い手をどう増やすのか。小さなビジネスをたくさんやることが必要だが、1人では限りがあり、どうやって地域に第2、第3 の和田さんを創っていくのか。(中川)
・仮設スーパーには全国から7名、月商8,000万円、東大でまちづくり専攻など、これまでいなかった人材の応募があった。彼らはスーパーを運営したかったのではなく、小高に来る手段として経営に飛びついた。課題はたくさんあり、アイディアもたくさんある。我々がハードルを下げ、ひな形を作り、そこに来てくれた人が新しいプレイヤーになるサポートをしていかねばと思っている。(和田)